なぜ、指針コーデがうまく作れないのか?
指針を学んで作っているのにOKをもらえない場合、それは「言われた通りにやる能力が低い」ということになります。
重要でない部分にこだわって、本当に重要なところが疎かになったり、勝手な思い込みで「指針とは違うことをしている可能性が高い」わけです。
もちろん、言われた通りにやることの重要性は理解していると思います。
それなのになぜ、言われた通りにやるのが難しいのか?
それは【大事な部分を見極める力(抽象化思考)が訓練されていない】から、というのが僕の見解です。
「言川 糸東」を「くんれん」と読める理由
そもそも、お手本通りにやるといっても完全に同じにするのは不可能です。
例えば、見本通りに文字を書き写そうとしても、手書きのクセや紙質の違いで100%同じにすることはできません。
それでも、意味が伝わるなら「同じ」と考えることができます。具体的には、
• 「糸東」
• 「練」
はサイズが違いますが、同じ意味だとわかります。でも、
• 「糸東」
• 「糸束」
はサイズは同じで似ているけれど、違うものだとすぐに気づくことができます。
これは、私たちが「文字」や「言語」といった重要な部分(抽象概念)をきちんと区別しているからです。
このように、全く同じにするのが難しい時でも「何が大事で、何が違ってもいいのか」をちゃんと見分ける力が重要になります。
それはコーデを作る際にも同じ。
指針コーデを再現する上で「何が大事で、何が違ってもいいのか」を区別するために、抽象化する力を高めることが役に立つというわけです。
人によっては「一発OK」をもらうこともできるでしょう。
視野を広げる抽象化のパワー
もし、アウトフィットを考える際に抽象化の重要性を理解できれば、これまで見逃していた情報やヒントが自然と目に入るようになります。
平たく言うと、視野が広がるということです。
例えば、24秋の指針として発表された「ジョッパーズパンツ」
このアイテム自体は比較的キレイにシルエットが出るのですが、トップスやアウターとの組み合わせによってはバランスが悪く見えると思います。
実際に僕も上記のパンツを試着しましたが、トップスとの相性が悪く、足の短さが際立ってしまいました。
そこで、このアイテムを使った指針コーデを抽象化して捉えると次のようになります(ここでは、パンツについてのみ言及)。
・膝上から腿周りにかけてゆったり
・裾口にかけてはフィット
このようなシルエットを出せれば、最悪ジョッパーズじゃなくてもいいわけです。
そこで、たまたまクローゼットにあった「サルエルジョガーパンツ」を工夫して履いてみます。
1・やや腰高に履く(股下が深いのでハイウエストで履ける)
2・裾をふくらはぎの位置まで上げる
3・すると、膝上から腿周りにかけて“ため”(ボリューム)ができる
4・脛の露出を防ぐために、パンツカラーに合わせたソックスを履く
このように履くことで、ジョッパーズではなくとも、ジョッパーズのようなシルエットには見えます。
※念のため言うと、ストリートでこのアイテムは使っていません(たまたま普段履きしていたパンツから閃いただけです)。
なおジョガータイプではなくても、裾にベルクロがついたタイプのパンツでも作れます。
この時、
・サルエル特有の「股上の深さ」
・裾がふくらはぎの位置にくる
これらは「誤差の範囲」として許容することができます。
ちなみに、ジョッパーズを履いた時の問題点(トップスとのバランス)が改善されるどころか、かなりこなれて見えるようになったのは嬉しい誤算でした。
これはほんの一例であり、頭を柔らかくして最適な選択肢を見つけるという手段の一つです。
大抵のコーデであればココまで工夫する必要はありません。
それよりも「色」や「今年のシルエット」、「素材」といった高い視点から服を選ぶことができれば、言われた通りのコーデを組むのはさほど難しくないはずです。
では、どうやって抽象化のスキルを高めればよいのでしょうか?
それについては、別の機会に触れてみたいと思います。
まずは、抽象化して考えることの重要性を理解してもらえたら幸いです。
普段の行動や決断の中で「何が大事で、何がそうでないか」をしっかり見極めるために、ぜひ意識を向けてみてください。
それが、同じ努力でより理想的なコーデを作るための第一歩だと思います。